中高生ベジタリアンは健康!
−少ない消化器疾患−


 成人病は食源病だといわれるが、若年層でも健康についての自覚症状に差があり、子供のころの食生活や食傾向がガン等の成人病の引き金になることが予想される。現代人の食生活、とくに <野菜の摂取が体にどのような影響をあたえるか> に関心を持ち、研究を続けている大阪信愛女学院短大教授・垣本充さんがこのほどベジタリアン(菜食主義者)の中、高生(14〜16歳)を対象にした研究成果をまとめ、社団法人大阪生活衛生協会(大阪市立環境科学研究所内)の機関誌「生活衛生」で発表した。成長期における菜食主義者の研究は欧米でも少なく、とくに今回の調査では若年層でもベジタリアンの方が消化器疾患が少ないという貴重なデータが報告された。

 垣本さんの話によると、アメリカではベジタリアンの栄養や健康に関する研究は数多くみられ、各種ガンの死亡率が普通食の人に比べて低いことや虚血性心臓病、糖尿病、骨粗しょう症、高コレステロール血症などの成人病にかかる率が低いことが報告されているという。とくに1988年に米国栄養士会が菜食を科学的に支持する論評を繰り広げて以来、菜食が見直されている。

 ただし欧米では、“菜食”という場合は植物性食品のみを食べる完全菜食だけでなく、牛乳・乳製品を食べる乳菜食、卵も食べる乳卵菜食の三つに分類されている。
 今回、柿本さんたちが調査をしたのは、日本で乳卵菜食を行っている全寮制の生徒と、普通食の大阪府下の同年齢の中学・高校生各120人。それぞれの健康状態についての調査と連続3日間の食物摂取調査を行って比較対照した。

 栄養摂取調査では、エネルギー、たんぱく質、脂肪、カルシウム、鉄、ビタミンA、B1、B2、C、ナイアシンを除いて各栄養素の摂取量平均値は所要量を充足。とくにエネルギー、脂質、カルシウム、鉄、ビタミンA、B2に関しては一般群に比べて有意に多かった。一方、一般群では男女とも、エネルギー、脂質、カルシウム、鉄の摂取量平均値が所要量に達せず、菜食群に比べて多いのはナイアシンのみだった。菜食群はナイアシンに不足が認められたものの、男女とも9割以上の充足率を示しており、全体的に一般群より栄養バランスがよくとれていた。体格については身長・体重とも菜食群が一般群より男女とも低い値を示したが、両群間に有意な差は認められなかった。

 「今回の調査では、菜食の生徒の栄養状態は普通食の者よりも良い状態あり、体格的にも特異な傾向は見られなかったことから成長期の食事としてはまったく問題がないと考えられよう。また、成人の菜食主義者が大腸ガンや消化器系ガンにかかる率や死亡率が低いという報告はこれまでに出ているが、10代の若年層でも菜食主義者には胃や腸の自覚症状が少ないことが認められたことは、予防医学的に興味深い」と垣本さんは話している。


−讀賣新聞 1990年10月10日−